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わが町 沼部の地誌
武蔵野台地の東南端に位置し多摩川を挟んで川崎市と対面する沼部地区は、長大な河川敷と閑静な遊歩道となっている六郷用水を擁する住宅地区である。
六郷用水は水田開発のために文禄年間(1592-1596)に多摩川の伏流水を利用して開発され、沼部地区は慶長年間(1596-1615)に開拓された。六郷用水は丸子橋際のトンネルから東光院と密蔵院の脇を流れて西嶺町24番地の川端までが現存しており、そこから先は地下に埋設されている。以前は川幅も広く、蛍も生息していたといわれる。
創建100周年の鄙びた駅舎の沼部駅の近傍には1934年に丸子橋が開通するまでは丸子の渡しがあった。沼部駅から中原街道に向け福山雅治の歌で一躍有名になった桜坂が延びている。桜坂は旧中原街道の切り通しであり、江戸初期には参勤交代の道として使用され、丸子の渡しは江戸の玄関口となっていた。
この地域は鎌倉時代の史書 吾妻鑑に源頼朝が平氏追討に貢献した葛西清重に恩賞として「武蔵国丸子庄」を下賜した(1180年11月)と記録されている。また、東光院の向かいには鎌倉の建長寺を創建した北条時頼(1227-1263)ゆかりのおいと坂がある。坂道に建つ木標には時頼が旅の途次、病に罹り養生したとの由来が刻まれている。
文禄・慶長の頃より地域のランドマークとして地域住民の拠り所となっている真言宗智山派の密蔵院と東光院は折々の地域行事の開催場所となっている。
レトロな沼部駅舎
現存する六郷用水の一角